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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)2937号 決定 1954年1月21日

本籍

東京都世田谷区玉川奥沢町二丁目一〇七五番地

住居

石川県河北郡高松町ツ一二五番地

会社々長

長柄亘

明治四〇年九月一〇日生

右に対する公正証書原本不実記載、同行使被告事件について、昭和二八年三月二五日東京高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人富田喜作、同阿部民次の上告趣意第一点乃至第三点は、違憲をいう点もあるが、その実質は、単なる法令違反の主張に帰し(法人の代表者がその機関たる地位において法人のために犯罪行為をした場合に、法人自体が処罰の対象となり刑事責任を負うかどうかは格別、行為者たる法人の代表者個人がその刑事責任を負担することは、わが刑法上当然であつて、この点に関する原判決の判断は正当である。」、同第四点は、量刑の非難で、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。弁護人島田武夫の上告趣意第一点は、原審で主張も判断もないから、この点を前提とする判例違反の主張は、その前提を欠くものであり(犯罪の経緯、動機を記載した起訴状が刑訴二五六条六項に違反しないことについては、昭和二六年(あ)一〇三五号同二七年六月一二日宣告の当法廷決定参照)、同二点は、違憲をいうが、その実質は、単なる訴訟法違反の主張であり(第一審判決の認定事実は、挙示の証拠を綜合すれば肯認できる。)、同第三点は、量刑不当の主張であり、被告人本人の上告趣意は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主張を出でないものであつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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